あの子達は、どこに帰るの?

原則として外出時、私の身辺保護に当たるのは、元自衛官(特に防衛大学校OB)と決められています。それは私が防衛大学校という学校を高く評価(体力面も含め)し、またその内の一部には極めて「優れた才能」を持ち合わせている逸材もいるからです。故に、初見で私と「1対1」でお会いするという事はまずありません。

ただ「良い所」もあれば勿論「悪い所」もあります。その一つに元公務員という事もあり、少なからず18歳以降に「衣食住」や「収入面」で一切苦労をせずに育った、私から言わせれば「温室育ち」という側面もあります。民間の皆さんは「自衛隊って大変なんじゃないの?」と思うかもしれませんが「大変」のベクトルが違いますし、やはり一般の国民生活とはどこか「ピント」がずれている部分が多々ございます。

以前、地方訪問により健康の為に散歩に出かけました。この時は、防衛大学校OBが2名随行していたのですが、繁華街を通過するコースだったんですね。そしたら「キャッチ」と言われる居酒屋への勧誘の方々に声をかけられました。防大OBの皆さんは、私を保護しようとキャッチの方に「けっこうです」「お辞め下さい」など言っていたのですが、言い方が少し冷たくてキャッチの方も不機嫌そうな表情をしていて。

私は防大OB2名に「あなた達は、18歳の時から衣食住、固定給も完璧に与えられて、本当の意味で国民生活の苦しみがまったく分かってない。まず今日は祝日でしょ。そしてここはオフィス街の中の繫華街。普段ならサラリーマンの皆さんが入店しますが、祝日はサラリーマンがいないので集客が厳しいんですよ。そんな事から、キャッチの方々は、店長や責任者の方々から●●組は最低連れてこい!とかプレッシャーをかけられる訳。

それにキャッチをしているという事は、大手企業の居酒屋ではなく、零細企業か個人経営の居酒屋のキャッチが出回っている。そうなってくると無名な居酒屋に誘導するのは更に過酷な事。また、あの子達はキャッチの仕事をしたくて、あそこに何時間も立ち続けている訳じゃないと思います。よく思い返してみて。あの子達は、金髪にピアス穴、ガリガリに痩せて、無精ひげの方もいて顔色も良くない。

なぜ、あの子達が、あの場所に辿り着いたか背景を考えてみて下さい。生まれ育ってきた環境により、涙ぐましい人生を過ごしてきた可能性が大きいでしょう。あなた達は、これから歩いてどこに帰るの?先方さんが用意して下さった、ラグジュアリーホテルのスイートルームに帰って、美味しい夕食に、明日も美味しい朝食を食べて。誰もが羨む生活をしているじゃない。じゃあ、あの子達は早朝まで働いて心も体も傷ついて、どこに帰るの?想像してからお断りのお声がけしてみて。」と申し上げました。

 

私がもし直接キャッチの方からお声をかけられたとしたら例えば「お声がけありがとうございます。今日は祝日で集客も大変じゃございませんか。残念なならが今日は夕食も終えてしまいまして。売上に貢献出来ず申し訳ございません。ただ、寒くなってきましたから、どうかお体を大切にお過ごしください。」とご返答申し上げる所でしょうか。

 

やはり「相手の置かれている環境把握」「国民生活の実態把握」「社会的に弱い立場に置かれてる方々への深い関心と案じる心」を常日頃から持ち合わせる事は、とても大切な事と私は感じます。みんなが互いに、思いやりも気持ちを持って日常生活が過ごせるようにと心から祈っております。