地方視察で何を語るべきか

私は旅行代理店での勤務経験もあり、現在でも旅行関係の仕事に携わる事が多々ございます。時折「星川さんに海外を案内してもらいたい」と指名を頂いて、ご案内する事も多々ございます。しかしながら2019年から続く「新型コロナウイルス」の影響により、日本のみならず世界中の観光従事者もまた厳しい環境下に置かれています。

そういった中で、今月は東南アジア各所を訪問し、かつ都市部から離れた地方までも足を延ばし、観光産業の実情を視察して参りました。徐々にコロナ規制が緩和されたとは申せ、今もなお観光客については地元住民以外ほぼいない状態が続いています。もう2年間以上のも厳しい経済情勢の中で「人間らしい生活」を維持する事すら難しい状況下の方々もいます。

そういった中、私は金銭的な援助は直接する事は出来ませんが「何か言葉をかける」という事を大切にしています。とある村を訪問した際に、実際に通訳を通して私がお話した内容は以下の様なものでした。

 

<70代女性との会話>

星川「何年、こちらで働いていらっしゃるの。」

住民「もう40年以上働いています。」

星川「随分、長くていらっしゃる。観光客が減り大変でしょう。」

住民「コロナで非常に大変で従業員を全て解雇しました。」

星川「必ず観光客は戻ってきます。私も必ずまた、ここに戻ってきますから、どうか10年後も20年後もお元気でいて下さいね。」

住民「ありがとうございます。」

 

<20代女性との会話>

星川「徐々に観光客が戻ってくると思いますが、ご機嫌如何ですか。」

住民「本当に生活が苦しく、本来、観光客に値引きして売れていた商品も、まったく値引きが出来ない状況下です。」

星川「我が国でも徐々に海外渡航が緩和されてきていますから、どうかもう少しの辛抱をお願いしたいと存じます。」

住民「あとどれくらい待てばお客さんは戻って来ますか。」

星川「断言は出来ませんが、必ず状況は良くなります。どうかお心持ちをしっかりと、お過し頂きます様に。」

 

実は、住民との会話は予定されたものではなかったのですが、苦しい状況を拝見して、どうしても「お声がけ」をしたいと思い通訳にお願いをして会話を交わしました。通訳の方に「仕事を増やしてしまって、ご迷惑をおかけしましたね」と申し上げたら、逆に「あの様に、声をかけて頂いて、みんな元気になったと思います。力をもらいました。お声がけ、ありがとうございます。」と通訳方も笑顔になって。

現代社会において「人助け」=「送金」「派遣」「援助」という言葉が最初に思い浮かぶ傾向にありますが、現地を訪問し「心と心」が通じ合う「思いやりのある言葉」をかけるという事も、大きな「人助け」になると私は強く考えています。とても辛い状況下にある時に、辛いと気が付いてもらえて、誰かに心を抱きしめてもらえたならば、大きな救いになる。こういった事を忘れてはならないと私は感じます。