防衛大学校の学生の皆さんへ

小原台の冬はとても寒い。2230には暖房が切れるし、仮に暖房がついていたとしても部屋によっては寒さ厳しい。私は毎年、この時期になると仲の良い学生達に「あったかくして寝てね」とメッセージを送ります。特に4年生にとっては、この時期「進路」と向き合って辛い想いをしている学生も沢山います。それに加えて今年はコロナ。様々な規制がかかってストレスもたまる一方でしょう。

若干18歳の若さで住み慣れた街を離れてやってきた小原台。強くならなきゃ、乗り越えなきゃと思って、日々過ごしていくうちに、あっという間に幹部自衛官に変身していきます。それでもまだまだ、甘えたいし、遊びたいし、ふざけたいし、人肌恋しいお年頃。そんな時、毛布一枚で本当に夜は癒されるでしょうか。そう考えた時、皆さんにとって子供でいれるのは何時でしょう。本当に自分らしくいれる時間ってどれくらいあるのでしょうか。

仲間がいるから寂しくないと言う人もいますが「心から人に甘える」という事が難しいのが防衛大学校です。それが出来なくて精神的なストレスから、様々な問題や事件が勃発します。でも、もし私が何か「一言」言うだけでも気休めになるなら、私はなんでも言いましょう。私に何か出来る事があったら、何でももしましょう。時に親ですら知らない秘密を語り明かしてくれる時もあって。私は日常に辛い事はありませんが、皆さんの「辛さ」を全て受け入れたいと思います。

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これは懐かしい写真です。去年、任官拒否をしようとした学生に贈ったカレンダーです。寂しくならないようにと、1月から3月まで私のサインが記載されています。任官拒否をするとなると人によっては過酷な「任官指導」が入るんですね。同期からもイジメに似たような事を受ける事もあります。1月~3月は忍耐の時です。しかしこのカレンダーには4月以降、私のサインはありません。4月からは本当の意味での自主自立をして頂きたい、そんな願いも込められています。彼は、このカレンダーを、今でも大切に保管してくれている様です。

いつの日か、私の方が先に皆さんより先に死にます。それが明日かもしれません。でも、それが仮に明日だったとしても、皆さんが一人で立派に生き抜いていけるように、私はずっと見守っています。毎年、毎年、新しく学生さんとお会いして、そして毎年、毎年、皆さんの卒業を見届けます。このサイクルを何年続けているでしょうか。学校長も指導官は数年で去りますが、私には任期も定年もないので。唯一、小原台を一番長く見届けている人間です。今年の新入生の皆さんとお会いするのも楽しみです。そして学校長も、今まで大変お疲れ様でございました。

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